未知谷の刊行物【国内文学】



 
翻訳者あとがき讃 翻訳文化の舞台裏
藤岡啓介 編著
四六判上製224頁 2,400円(税別)
ISBN978-4-89642-490-4 C0095



日本の近代は翻訳の歴史と進行を一にするといっ
てもよい。外国文化を理解し、外国語に堪能であ
り、かぎりなく日本語を愛する人々……。翻訳書
一冊一冊が持つ熱気をみれば、見事な日本近代史
となる。近代100年、35の翻訳書から。
 
「時代の出版文化とひいては知のあり方そのものが凝縮された形で詰まっているのがあとがきなのだ。(……)時代順に並べられた翻訳者のあとがきを通覧すると、外国文化に対する私たちの態度の移り変わりを読み取ることができて興味深い。(……)敬意と、愛情と、失われつつある文化を懐かしむいくばくかの哀惜の念とが感じられる」(阿部公彦氏評「週刊読書人」2016年5月6日号)


目  次

編者まえおき

一九一五(明治四五)年 公文書院
小櫻新吉(『オリヴァー・ツゥイスト』翻案) ヂツケンズ作 堺利彦譯
11 
一九二七(昭和二)年 平凡社
乞食と王子 マーク、ツエイン作 村岡花子譯
14 
一九二九(昭和四)年 改造社
オリヴァー・ツウィスト チャアルズ・ディッケンス作 馬場孤蝶譯
18 
一九三〇(昭和五)年 岩波書店
哀詩 エヴァンジェリン ロングフェロー作 斉藤悦子訳
21 
一九三五(昭和一〇)年 岩波文庫
エリア随筆 ラム著 戸川秋骨訳
24 
一九三八(昭和一三)年 岩波書店
死せる魂 ゴーゴリ作 平井肇訳
30 
一九三九(昭和一六)年 冨山房
序曲・入江のほとり マンスフィールド作 佐々木直次郎譯
36 
一九四三(昭和一八)年 白水社
ガルガンチュワ物語 フランソワ・ラブレー原作 渡邊一夫譯
48 
一九四八(昭和二三)年 太虚堂書房
あぶら饅頭(モーパッサン選集 第四巻) モーパッサン作 丸山熊雄訳 挿絵藤田嗣治
53 
一九四八(昭和二三)年 彰考書院
反デューリング論(オイゲン・デューリング氏の科学の変革) エンゲルス著 岡村繁譯
62 
一九五〇(昭和二五)年 三笠書房
人間の絆 サマセット・モーム作 中野好夫訳
68 
一九五〇(昭和二五)年 穂高書房
おどけ草紙(こんと・どろらてぃく抄) おのれ・ど・ばるざっく作 神西清訳 挿絵ぎゅすたう・どれ
74 
一九五〇(昭和二五)年 新樹社
風流滑稽譚 バルザック作 小西茂也譯
80 
一九五〇(昭和二五)年 筑摩書房
二十五時 C・V・ゲオルギウ作 河盛好藏譯
86 
一九五一(昭和二六)年 岩波文庫
床屋コックスの日記・馬丁粋語録 サッカレ作 平井程一譯
90 
一九五一(昭和二六)年、一九七三(昭和四八)年 岩波書店
海の沈黙・星への歩み ヴェルコール作 河野與一・加藤周一訳
96 
一九五四(昭和二九)年 岩波文庫
魅せられたる魂 ロマン・ロラン作 宮本正清訳
103 
一九六〇(昭和三五)年 新潮文庫
アメリカの悲劇 シオドア・ドライザー作 大久保康雄訳
111 
一九六二(昭和三七)年 河出書房新社
さかしま J・K・ユイスマン作 澁澤龍彦
116 
一九六六(昭和四一)年 筑摩叢書
中国 もう一つの世界 エドガー・スノー作 松岡洋子訳
122 
一九七三(昭和四八)年 中公文庫
論語 孔子 貝塚茂樹訳注
126 
一九七五(昭和五〇)年、二〇〇八(平成二〇)年 新潮社
雪のひとひら ポール・ギャリコ作 矢川澄子訳
132 
一九七七(昭和五二)年 新潮文庫
風と共に去りぬ ミッチェル作 大久保康雄・竹内道之助訳
140 
一九八四(昭和五九)年 白水社
ライ麦畑でつかまえて J・D・サリンジャー 野崎孝訳
147 
一九八五(昭和六〇)年 中央公論社
ルネサンスの歴史 I・モンタネッリ/R・ジェルヴァーゾ作 藤沢道郎訳
153 
一九八五(昭和六〇)年 大阪外語大学インド・パキスターン研究室、花神社
ファイズ詩集 ファイズ・アフマッド・ファイズ作 片岡弘次訳
158 
一九九五(平成七)年 筑摩書房
ローマ帝国衰亡史I エドワード・ギボン作 中野好夫訳
164 
一九九七(平成九年)年 筑摩書房
カポーティ短篇集 トルーマン・カポーティ作 河野一郎訳
171 
一九九八(平成一〇)年 岩波文庫
桜の園 チェーホフ作 小野理子訳
176 
一九九九(平成一一)年、二〇〇六(平成一八)年 早川書房
博士と狂人(世界最高の辞書OEDの誕生秘話) サイモン・ウィンチェスター著 鈴木主税訳
185 
二〇〇六(平成一八)年 ちくま文庫
タオ 老子 李耳作 加島祥造訳
190 
二〇〇八(平成二〇)年 角川書店
罪と罰 ドストエーフスキー作 米川正夫訳
194 
二〇〇八(平成二〇)年 平凡社ライブラリー
源氏物語 紫式部/アーサー・ウェイリー英語訳 佐復秀樹日本語訳
202 
二〇一〇(平成二二)年 光文社古典新訳文庫
嵐が丘 エミリー・ブロンテ作 小野寺健訳
210 
二〇一四(平成二六)年 中央公論新社
痴愚神礼讃――ラテン語原典訳 エラスムス作 沓掛良彦訳
214 
後記
220 

藤岡啓介 [ふじおか けいすけ]
1934年、東京にて藤岡淳吉の次男として生まれる。早稲田大学文学部露文科専攻。
父淳吉は堺利彦の門下で昭和初期に独立系左翼出版社共生閣を創設、わが国で初めての『国家と革命』(レーニン)を非合法出版などして、壊滅状態にあった左翼運動の中でひとり気を吐き、また、第二次大戦後は彰考書院にて、幸徳・堺訳『共産党宣言』を初めて完本にて世に送り、社会科学、文学、民族学、歴史学関係の出版活動を行うなど、ひとつの志をもって出版を営んでいた。志も55歳までの苦闘に萎えてしまったものであるか。しかし土佐の出身であることもあってか、子供たちの幼年期、少年期の教育では、坂本龍馬、中江兆民、幸徳秋水が愛すべき英雄であること、マルクス、エンゲルス、レーニンを知らぬことは罪悪であること、そしてこれらの人物のエピソード、伝聞ではない堺利彦の直話を聞かせていた。志を次代に伝えることに意を尽くした。
中学のころ、堺利彦の翻訳したアプトン・シンクレア、ショー、ロンドン、ゾラの作品を耽読したのはこの影響であった。また、父の友人、レーニンの翻訳家川内唯彦、フランス文学者石川湧、文化人類学者岡正雄の諸先生に哲学、文学、外国語、翻訳などについての教えを自宅にいながら傾聴することができたのは、かけがえのない父の遺産であった。この頃のわが家は大学であった。
社会の書記たらんとしたバルザックに傾倒したのは、やはり志であったか。大学には『バルザックとドストエフスキー』を卒論として提出した。論中、サドを引いて論を立てたが、卒論主査が「サドは実在の人物かね」と問われた。大学中退は経済的理由を主としたものであったが、やはり中退が名誉であったと思っている。
1956年、彰考書院にて『雪どけ』(エレンブルグ、小笠原豊樹訳)、『マルキ・ド・サド選集』(澁澤龍彦訳、全三巻)を企画、出版。同社の慢性的事業不振に対応尽き、やがて閉鎖。筆名にて大衆時代小説を連作。
1959年、専門技術誌出版社に勤め、年鑑、便覧、月刊誌を編集。1973年、株式会社インタープレス設立、月刊誌『工業英語』を創刊、1983年、我が国初の英和対応データベースをコンピューターにより編集した『科学技術25万語大辞典』を刊行。1995年、電子辞書編纂、執筆、翻訳を業とする。
 
著書
『翻訳は文化である――妙訳は口に苦し』(丸善ライブラリー、2000年)
『英語翻訳練習帳――ジュリア・ロバーツはお好き?』(丸善ライブラリー、2001年)
『英文を読み解き訳す――出版翻訳デビューの手ほどき』(三省堂、2012年)
 
翻訳
『ボズのスケッチ 短編小説篇 上、下』(チャールズ・ディケンズ、 岩波文庫、2004年)
『世界でいちばん面白い英米文学講義』(E.エンゲル、草思社、2006年)
『人生最期のことば――時代をつくった83人』(T.ブレヴァートン、丸善出版、2013年)
ボズのスケッチ』(チャールズ・ディケンズ、 未知谷、2013年)
 
辞書編纂
『科学技術25万語大辞典、英和/和英編』(インタープレス、1983年)
1983年度日本出版翻訳文化賞(毎日新聞社)特別賞受賞


この商品は下のフォームからご注文いただけます。
翌営業日に小社から折り返し内容確認のメールをさしあげますので、
万が一、小社からのメールが届かない場合は、
お手数ですが、電話等でお問い合わせくださるようお願いします。
 
なお、他の商品も合わせてご注文くださる場合などは、
注文方法]をご覧のうえ「買い物カゴ」をご利用ください。
このフォームは「買い物カゴ」とは連動していませんのでご注意ください。
書   名
著  者
単 価
冊数
翻訳者あとがき讃 翻訳文化の舞台裏
藤岡啓介 編著
2,400円(税別)

お 名 前

郵便番号
000-0000の形で正確にご記入ください。
ご 住 所




※アパート・マンションの場合は号数までご記入ください。
電話番号

Eメール

このページの感想や小社へのご意見・ご要望・質問などをお聞かせ下さい。






 


[HOMEへ][新刊案内へ][全点リストへ]["国内文学"リストへ][前コードの書籍へ][次コードの書籍へ]

未知谷